「商学部金田一助教」
商学部の助教の仕事は,いくつかの授業担当と研究,ということになっている。
会社の組織で言えば,ヒラの中でも下っ端にあたるから,雑務も当然ふってくる。
それが所属している大学の中だけでなく,いわゆる師匠にあたる先生のつながりでも,諸々おりてくるのである。
大学にいると,だいたいこの雑務に追われ,それが終わって授業準備をやると,研究までにはとても手がまわらない。
必然的に,自宅で研究することになる。
朝4時半。窓に目をやるとさすがに夏場でもまだ暗い。
朝のこの時間がもっとも静かで仕事に集中できる時間である。
まだ1才の娘はまだ寝ている。
金田一美子は紀要の執筆にとりかかる。
講師になるためには,論文の数が必要なのだ。