「商学部金田一助教」

という名の小説です。「文学部唯野教授」を尊敬してます。仕事をしつつ,小説を書いてます。一部,公開してみようと思いまして。出版野心あり。出版社等のかた,よろしくお願いします。

「商学部金田一助教」

商学部助教の仕事は,いくつかの授業担当と研究,ということになっている。

会社の組織で言えば,ヒラの中でも下っ端にあたるから,雑務も当然ふってくる。

それが所属している大学の中だけでなく,いわゆる師匠にあたる先生のつながりでも,諸々おりてくるのである。

大学にいると,だいたいこの雑務に追われ,それが終わって授業準備をやると,研究までにはとても手がまわらない。

必然的に,自宅で研究することになる。

 

朝4時半。窓に目をやるとさすがに夏場でもまだ暗い。

朝のこの時間がもっとも静かで仕事に集中できる時間である。

まだ1才の娘はまだ寝ている。

 

金田一美子は紀要の執筆にとりかかる。

講師になるためには,論文の数が必要なのだ。

バレリーナ

そんなことを考えていると,いつの間にか保育園のお迎えの時間になっていた。急いで迎えにいく。

なぜ,娘の尿やら便やらをつつんだオムツを持ち帰らねばならないのだろう,と思ったのは最初の頃だけで,今では,ありがとうございます,と礼を言いながら受け取る。

帰宅すると,夕飯を作って,娘と一緒に食す。娘は食すと,割とすぐに出るものが出る。

オムツを替えて,手を洗ってリビングに戻ると,娘がどこからかとってきたピンク色のシャンプーハットの中に両足をつっこんでいる。

ん?何か変な・・・と思ってメガネを掛け直すと,娘はオムツを自分で脱いだ模様で,お尻が丸出しで,シャンプーハットだけをはいている。シャンプーハットバレリーナのスカートにみえなくもないが,なにぶん,その下に何も履いていないのだ。本人は気に入った模様で,笑いながら,走り回っている。

この子は,お笑いの才能があるなあと感心しつつ,可笑しかった。

 

世の中に片付くなんてものはない

いつからこんなに守銭奴になっちゃったかなあ。

将来の不安から、何か買うと、買った後にこんなん買って大丈夫だったかな、と、一瞬いやな心持ちがする。ただ、次の瞬間には、諦めの境地にはいって、考えない、という逃げ道をひた走る。買い物を楽しむ人がいるなんて、人種が違うとしか思えない。

それにしてもいやな想像をしてしまった。きっかけは、いつもはつながる母の携帯にかけたところ、電源が切られていたようで、つながらなかったことだ。一瞬、将来を悲観して自殺なんてしてないよな、と不吉な考えが浮かんで消えた。背筋がぞっとする。

親のことを思うと、心臓のあたりが、ぞわぞわする。暴力をふるった父と、守ってくれた母。30代になってもなお、親と向き合うのは精神的にきつい。

いつになったら、どうしたら安心して暮らせるようになるのだろうか。

今は雇い主から毎月給料をもらっているが、子供にかかるカネや、金銭感覚がザルな両親に渡すお金を考えると、終わりがみえない。夏目漱石の道草を思い出す。いつになっても片付かないものなのか。人の欲というのは、おそろしいものだ。